最上小国川の治水対策に関するニュース

●地域住民への説明会は、ダム賛成と反対で意見二分。
  質疑は紛糾し、双方の歩み寄りも意見集約もないまま知事の最終判断へ
・・・06.11.25
  昨日24日、県が最上小国川で計画している穴あきダム建設について流域住民に説明する「最上小国川治水対策・住民説明会」が最上町中央公民館で開催されました。夕方6時半に始まったこの会では、主催者の県土木部がスライドを用いて約1時間、最上小国川の治水対策に関する一連の経緯について説明。その後、質疑に移り、ダム建設促進派とダム以外の治水対策を求める側の双方から意見が相次ぎました。この質疑では、意見の異なる住民の質問や意見に対して、遠慮のないヤジや罵声を浴びせるシーンが数多く見られ、質疑が一時中断して場面も。それでも会は時間切れを理由に予定通り8時40分に終了し、ダムかダム以外の治水方法かで大詰めに来ている現状を考えると極めて中途半端な説明会となりました。またこれまでもダムかダム以外の治水かで地域住民の意見は分かれていましたが、今回はその意見の違いから感情的な対立構造が浮き彫りになり、はなはだ後味の悪い住民説明会となりました。
  しかし、そのような会だったにも関わらず、終了後の記者質問に対して県土木部の池田隆部長は「今日の説明会で、我々としてはやるべきことはすべてやった。あとは斎藤知事の最終判断をあおぐだけ」と解答。ダム以外の治水方法を訴える人たちから、計画の進め方についてさまざまな疑問が出され、代替案が提出され、さらに知事に直接面談を申し入れている人たちがいるにも関わらず、それらを無視する形で、最上小国川の治水対策は最終局面へ向かおうとしています。・・・以上、概略

ダム以外の治水を求め、資料を出して穴あきダムの弊害を訴えようとするダム反対はの人に対し
て、ダム賛成派からは「退場しろ、帰れ」といったヤジや罵声が上がり、一時紛糾する場面もあった

説明会での意見を時間がないと遮られたため、終了後に県土木部の幹部に島根県益田川の穴あ
きダムの写真を示し、実際は環境に悪影響があるにも関わらず影響は小さいと言い続ける県側
に対して説明を求める草島氏(草島氏は「最上小国川の真の治水を求める会」事務局長)
取材メモ・その1>
そもそも今回の住民説明会は、11月16日に斎藤弘山形県知事が小国川漁協の幹部と意見交換を行った際、知事から漁協側に「地元住民の方々に十分な説明をするために、最上川水系流域委員会がダム案、放水路案、河道改修案の3案についてメリットとデメリットなどを説明する場を設けたい」と提案されて開催されたものです。記者自身その場にいて取材していたこともあり、24日は知事自身が説明会に出席し、住民の意見を直接聞くのかとも思っていました。また一連の説明にしても、知事から「最上川水系流域委員会が云々」という言葉が出ていたため、同委員会の方が説明に立つのかとも思っていました。しかし実際はその場に斎藤知事の姿も流域委員会の方の姿もなく、説明に立ったのは県土木部の人で、これまで何回も開催されてきた懇談会や流域委員会、その他の説明会などと基本的には同じもの。内容的に何ら新しいものもなく、記者としては期待はずれの説明会に終わりました。会終了後に県土木部河川砂防課の幹部に確認したところ、今回の説明会開催を提案したのは同課ではなく、斎藤知事に間違いないとのこと。それならば知事は、なぜ自ら提案した説明会に足を運び住民の声に耳を傾けないのか。記者としてははなはだ疑問でした。砂防課の幹部によると、「知事はいろいろお忙しいから」ということで、説明会の模様については河川砂防課がまとめる資料や直接の報告などで知事に伝えられる模様です。それをもって知事は最終判断を下そうとしているようです。100億円をゆうに超える公共工事。ダムか、それともダム以外の手法かで地元住民の間に亀裂が生じる中、最終局面にきてのこの対応には、疑問を感じるばかりです。はたして斎藤知事はどのような最終判断を下すのか。地元民や県民のみならず、全国の人が注目しているはずです。(文:佐藤豊)

●斎藤弘山形県知事が舟形町を訪れ、小国川漁協幹部と意見交換。・・・06.11.16掲載(17日に一部加筆、修正)
本日16日、斎藤弘山形県知事は県土木部河川砂防課の担当者らとともに舟形町を訪れ、舟形町中央公民館で小国川漁協の幹部たちと最上小国川の治水対策に関する意見交換を行いました。4時30分に会場に到着した斎藤知事は、簡単な挨拶の後、小国川漁協の沼沢組合長や理事など14名とさっそく意見交換。知事は、小国川漁協がダム建設案に反対している理由やこれまで10数年に渡る経緯などについて説明する沼沢組合長の声に耳を傾けながらも、知事としては「県民の生命と財産を守るのが第一」と強調しました。今後について斎藤知事は、「地元住民の方々に十分な説明をするために、最上川水系流域委員会がダム案、放水路案、河道改修案の3案についてメリットとデメリットなどを説明する場を設けたい」と提案。しかし漁協側は、最上川水系流域委員会の委員構成や議論のあり方そのものがアンフェアであったことを指摘し、知事の提案には具体的にどんな形の説明会になるのかを聞いてから検討し対応したいと返答しました。
なお小国川漁協としては、今回の知事との意見交換は一昨日の14日に急に知事側から話があったもので、準備も何もできていない状況での話し合いだったこともあり、組合としての意見をまとめ今月20日以降に再度話し合いの時間をとっていただくよう斎藤知事に要請しました(以上概略)
追加・・・意見交換終了後に斎藤知事は記者団の質問に答え、「どのような治水対策をとるかの最終判断は、時間的なことも考慮するが、自分自身が納得するまで検討したい」と明言しました。

舟形町中央公民館の研修室で行われた意見交換の様子。写真左側の列に並ぶのが斎藤弘山形県知事
と池田隆土木部部長、加藤令一河川砂防課課長など。

●最上小国川の治水対策で、ダム賛成派が大会を開き、
  ダムによる治水を求めた大会決議を採択。
・・・06.11.16掲載
穴あきダムか、それともダム以外の方法による治水かで意見が分かれている最上小国川の治水対策で、山形県土木部とともに穴あきダム建設の促進を目指している「最上小国川治水堤建設促進協議会」(会長:高橋重美最上町町長)は11月14日、最上町中央公民館で「最上小国川『穴あきダム』早期実現町民大会」と題した大会を開き、早期実現に向けて以下の4項目を盛り込んだ大会決議を採択しました。
<4項目は次のとおり>
 ●穴あきダムの実現に向け、全町挙げて取り組んでいくこと。 
 ●安全で安心な町づくりのため、国・県の機関に『穴あきダム』の早期着工を強く要望すること。 
 ●町民はもとより広く県民に『穴あきダム』の必要性を訴えること。 
 ●『穴あきダム』の実現に向けた署名活動を赤倉温泉地区から全町に広げていくこと。

  同公民館大ホールで開かれた大会には町内外から約450〜500名ほどの地域住民が参加。最初に京都大学大学院助教授の角哲也氏が「治水専用(流水型)ダムに関する考え方について」と題して基調講演。水を貯める多目的型ダムと水を貯めない穴あきダムの違いや、穴あきダムの特徴、穴あきダムの国内外での事例などを紹介しながら、最上小国川のケースには特に何も触れないまま「治水専用の穴あきダム(流水型ダム)は21世紀のダムとして提案したい」と講演を締めくくりました。その基調講演の後の町民大会では、高橋重美最上町町長をはじめとした町の幹部が同協議会の役員としてずらりと壇上に並び、演台をはさんだ反対側にはダム建設に賛成する県議会議員や最上町を選挙区に含む国会議員(いずれも本人の代理として秘書などが出席)が顔をそろえました。そして県議らが来賓挨拶としてダム推進を声高らかに応援した後、赤倉温泉内の旅館経営者や赤倉温泉女将の会の代表者、赤倉温泉ファンの元山形市議、そして小国川漁協組合員で下白川地区区長の4名が、「穴あきダム賛成」の意見発表を行いました。そして最後に大会決議を採択し、町民挙げて穴あきダムを推進していくことを確認して閉会しました。

「穴あきダムを21世紀のダムとして提案したい」と語った、元建設省職員で現京都大学大学院助
教授の角哲也氏。

基調講演後の町民大会で開会の挨拶を行う最上小国川治水堤建設促進協議会の副会長で最
上町議会議長の伊藤一雄氏。会場には建設関係とおぼしい方たちが多数見受けられた。

壇上に並んだ県議の皆さんと国会議員(代理)の皆さん

こちらは主催者である最上小国川治水堤建設促進協議会の幹部の皆さん

●最上小国川の治水計画(ダム計画)について、
  県土木部と「最上小国川の真の治水を考える会」が意見交換
・・・06.11.9掲載
 
最上小国川の治水対策で県が進めるダム建設案に反対し、ダム以外による治水対策案を提唱している「最上小国川の真の治水を考える会」(押切喜作代表)は11月8日、県庁内にある土木部河川砂防課を訪れ、最上小国川の治水対策について意見交換を行いました。この話し合いに、土木部からは池田隆土木部長をはじめとする河川砂防課のメンバー7名が参加。一方の「最上小国川の真の治水を考える会」(以下「考える会」)からは押切代表をはじめ京都大学名誉教授(河川工学)で京大防災研究所所長、淀川水系流域委員会委員長などを歴任してきた今本博建氏やアウトドアライターの天野礼子氏など8名が参加しました。
  話し合いではまず、考える会を代表して今本博建氏が、同会が県に提出している代替案について説明。一つひとつ技術的な根拠や可能性を示しながら、ダムに依らない手法で最上小国川の治水が可能だと説明し、県側に治水対策の再考を求めました。これに対して池田土木部長は、今本氏が提示した一つひとつの項目をことごとく否定。「検討はするが、最上川流域委員会が意見集約して知事に提出した穴あきダムによる治水対策が最も妥当で、議論は尽くされた」として、かねてからの予定通り11月中にもダムの整備計画を策定する意向を表明しました。
 今後は斉藤弘山形県知事がどのような判断を下すのかに焦点が集まることと思われますが、考える会では今後、斉藤知事に面会を求めて直接代替案を示し、赤倉温泉街の街づくり(活性化)を含む最上小国川の治水対策案をアピールしたい意向。どのような治水対策が策定されるか一つの区切りの時期を迎えつつあるだけに、県土木部および考える会のこれからの動きと、斉藤弘山形県知事の対応・判断が大きく注目されます。

取材陣が取り囲む中で行われた話し合いの様子。池田隆土木部長(向こう側左から3人目)
は、考える会が提案する案に対して口では「検討する」と言いながら、深く検討する様子も姿
勢も見せないまま簡単に否定を繰り返した。

土木部との意見交換の後、考える会のメンバーは県庁記者クラブで記者会見を行った。この
場において今後の対応を問われた天野礼子氏は、「この問題はもはや政治的な問題になっ
ており、今後は知事に直接訴えることも考える」と記者団に答えた。

●県議会の景気・雇用対策特別委員会で、伊藤孜議員が
  最上小国川の治水計画(ダム計画)について質問
・・・06.11.9掲載
 11月8日に開かれた県議会の景気・雇用対策特別委員会で、「山形21世紀の会」の伊藤孜議員が最上小国川の治水対策について質問を行いました。伊藤氏は県土木部が進めている最上小国川のダム計画について、今後のスケジュールや建設費などについて質問しながら、「最上小国川の真の治水を考える会」が10月28日に開催したシンポジウムにおいて、県側に参加要請があったにもかかわらずそれを断ったのはなぜかと質問。これに対し河川砂防課の加藤課長は「同会からは計画中のダムについて説明してほしいということで要請があったが、時間が15分ということで、それでは短くて説明しきれないとお断りした。止む終えない対応だったと考えている」と解答しました。また最上小国川の真の治水を考える会が提出した代替案についての考えや対応を伊藤議員が質問したのに対し、加藤課長は従来の主張を繰り返しながら同会の代替案は現実的でないと否定。懸念される環境への影響については、「十分に検討して影響は少ないと考えているが、絶対に影響が出ないとは言えないので、ダム建設前と後のモニタリング調査を実施して、影響があれば対応していきたい」と解答しました。伊藤議員からは「行政側には県民に対する説明責任があり、さまざまな場所に出かけてその責任を果たし、県民の理解を得るということをしっかりとやってほしい。また反対意見や少数意見を軽視することなく対応し、互いに良かったと言えるように了解を得られるようにしてほしい」と要望があり、加藤課長は「さらに説明を重ねて理解を求めていきたい」と解答しました。
●民主党代表代行の菅直人氏らを招き、
  「最上小国川の真の治水を考える」シンポジウム開催
・・・06.10.30掲載
 最上小国川の治水対策で、ダム以外の方法による治水が可能だとして県が推進するダム建設案に反対している「最上小国川の真の治水を考える会」(押切喜作会長)は10月28日、新庄市の新庄市民プラザで「山形のダムと公共工事を考える」と題したシンポジウムを開き、約150名の参加者を前に基調講演やパネルディスカッションを行いました。このシンポジウムで「最上小国川の真の治水を考える会」は、ダム案に代わる最上小国川の治水対策代替案を公表。代替案は「最上小国川の真の治水を考える会」をはじめ京都大学名誉教授・今本博建氏、新潟大学工学部教授・大熊孝氏、法政大学法学部教授・五十嵐敬喜氏、アウトドアライター・天野礼子氏の連名によるもので、天野氏らは今後は代替案をさらに具体的なものにして、斉藤弘山形県知事及び担当部署の山形県土木部河川砂防課に提案していくと明言しました。
  この日のシンポジウムでは、まず主催者を代表して「最上小国川の真の治水を考える会」押切喜作会長が開会挨拶。その後、事務局の草島進一氏から最上小国川の治水対策に関する経緯説明があり、それを受けて京都大学名誉教授・今本博建氏、新潟大学工学部教授・大熊孝氏、アウトドアライター・天野礼子氏の3氏が、それぞれのテーマに沿って基調講演を行いました
(各氏の講演内容については別掲)。そして基調講演の後は、アウトドアライター・天野礼子氏が進行役となり、民主党代表代行の菅直人氏と法政大学法学部教授・五十嵐敬喜氏によるパネルデイスカッション。「本当に必要な公共事業を行うために」と題したこのパネルデイスカッションでは、両名がそれぞれの専門分野から公共事業における問題点などについて話し合いました(発言内容は別掲する予定)
 そして最後に、「最上小国川の真の治水を考える会」と今本氏、大熊氏、五十嵐氏、天野氏の連名による代替案を発表し、前述のとおり今後は代替案をより具体的にして斉藤弘山形県知事及び担当部署の山形県土木部河川砂防課に提案すると明言しました。
・・・以上概要をお伝えしました。各氏の基調講演やパネルディスカッションの詳細については、また追って掲載します。


アウトドアライターの天野礼子氏が進行役となって、民主党代表代行の菅直人氏と法政大学法学部教授・五十嵐敬喜氏がそ
れぞれの視点から現在の公共工事の問題点や、改善に向けたビジョンなどを語り合った

パネルディスカッションで進行役を務め、
基調講演も行ったアウトドアライターの天
野礼子氏。ダム建設反対の運動につい
ては、「県外から来た私たちより、もっと地
元の皆さんがやっていかないといけない」
と指摘した。

民主党代表代行の菅直人氏は、「日本の
役所は、お金(予算)を使えば使うだけ力
が評価される権限が増していくシステム
になっていて、それが最大の問題」と指
摘。政権交代でこうした構造の改善を目
指したいと語った。

五十嵐氏は小国川の治水対策で、「ダム
建設がいいのか、それとも赤倉温泉を活
性化させる別の方法がいいのか。赤倉温
泉の将来を考えて、県は政策転換すべき」
と発言し、会場の拍手を浴びていた。

山形県が推進するダム案に代わる治水対策案について説明する新潟大学工学部教授・大熊孝氏と、連名の各氏。