山形県内の釣り関連ニュース・・・11月17日の釣りフォーラム関連記事


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基調講演 演題「望ましい釣り場を構築するには」

       独立行政法人水産総合研究センター
       中央水産研究所主任研究官 水産学博士 中村智幸氏
講演内容要旨・・・・・「内水面(河川・湖沼)釣りフォーラム」パンフレットより転載

イワナ、ヤマメの種川として枝沢を保全する

 
イワナ、ヤマメには、枝沢に遡上して産卵する性質がある。特にイワナではその傾向が強い。また、枝沢は稚魚にとって安全な生息場所でもある。つまりイワナ、ヤマメにとって枝沢は「種川(たねかわ)」なのである。このことから、流量の少ない枝沢であっても、年間を通じて水が流れているのであれば種川として保全する必要があるといえる。
 枝沢を種川として機能させるためには、本流からの魚の遡上を阻害するような堰堤やダムを建設しないようにする必要がある。また、枝沢にすでにつくられた堰堤やダムがある場合は、魚道を付設して魚が上流まで遡上できるようにすることも重要である。やむをえず枝沢に新たに堰堤やダムを建設する場合には、本流との合流点からなるべく距離を置いて建設し、その枝沢の持つ種川としての価値を失わせないようにする。
 一方、本流についても、すでに建設された堰堤やダムには、魚道を付設して下流に生息する魚が上流の枝沢まで遡上できるようにする。また、本流に新たに堰堤やダムを建設する場合は、枝沢との合流点の上流に建設して、下流に生息する魚がその枝沢を遡上できるようにする。魚道を付設できないような堰堤やダムの下流には、人工産卵場を造成する方法もある。
 ただし、堰堤やダムを造らない、魚道を付設するといったことは、一個人ではできない。しかし釣り人にできることとして禁漁がある。枝沢に生息する魚は釣らずにそっとしておくのも繁殖保護の一つの方法である。
釣り場としての河川の使い分け(ゾーニング)
 
今後は釣りを楽しむとともに、放流された養殖魚と交雑していない地付きの魚(=在来個体群)を保護し、その川独自の遺伝を残していくことも漁協や遊漁者の責任であると考えられる。その方法の一つとして、河川の使い分け(ゾーニング)がある。
 地付きの魚が生息する川は「在来個体群保護エリア」として全面的に禁漁にしたり、禁漁にしないまでも禁漁期間を長くする、持ち帰ってよい魚の数を定める(=尾数制限)、釣っても持ち帰らない(=キャッチアンドリリース)、一日に入れる釣り人の数を定める(=人数制限)等の規制を設ける必要がある。
 すでに養殖魚が放流され、地付きの魚との交雑が進んだと思われる川は「遊漁エリア」として釣り人に広く利用してもらう。必ず魚が釣れるというのが理想で、養殖魚の放流を重点的に行う。ここでは生息環境が比較的良好で、産卵ができたり、稚魚が育成できるようであれば、発眼卵や稚魚の放流を行い、より天然に近いきれいな魚が釣れるようにする。産卵や稚魚の育成が困難な川では成魚放流を行い、ヒレの先が丸かったりして姿形は悪いけれど、とりあえず魚は釣れるという“釣り堀的”な利用をすることになる。
         
           スライドを用いての講演風景

パネルディスカッション

テーマ「望ましい釣り場を構築するために急がれるものは」 −漁協は、釣り人は、行政は−
 
                     コーディネーター   山形県環境保全審議会委員の吉野智雄
パネラー       山形県水産室 室長・今野亘
 山形県河川課 河川調整主幹・鈴木敏雄
 山形県渓流釣協議会 会長・斎藤金也
 リリカルアングラーズ 元会長・寒河江芳美
 山形県内水面漁連 会長・高橋安則
 県南漁業協同組合組合長理事・島軒治夫
助言者        中央水産研究所主任研究官で水産学博士の中村智幸

※以下、発言の要旨を紹介します

島 軒
県南漁協では、バブル期以降川に多くの堰堤がつくられ、河川工事の影響もあって魚が減っている。資源確保は急務になっており、そのために今後の課題として2つ考えていることがある。一つは堰堤などに魚道をつくること。もう一つは側溝のようになっている川を元の姿に戻すことだ。これらを行政に働きかけていきたい。
高 橋 漁協の財政は遊漁料と組合員の行使料で成り立っているが、財政的には非常に厳しい。そのため遊漁者を増やすことで増収をはかることが大切と考えている。そのためには遊漁者に喜ばれる釣り場づくりが大切と考えている。遊漁者の意見は今後も良く聞いていきたい。
寒河江
一般遊漁者として意見を述べるが、漁協の監視体制に問題があると思う。われわれは遊漁券を買って川で釣りをしているが、券を買わない人も多い。券を買っていなくても監視員がいないからノーチェックで釣りをしている。これでは券を買っている人が損している感じで、不公平感がある。
斎 藤 一般遊漁者の代表として意見を言うが、私は釣り人の立場をもっと高めたい。つまり行政、漁協などの話し合いの場に釣り人も加えてもらって、意見を言わせてほしい。また遊漁券の不公平感は確かにあるのでそれを解消してほしい。
鈴 木
私は個人的に釣りに興味があるが、ここでは河川管理の観点からいいたい。ここ最近、山形県では洪水などの水害が少なく、これは河川改修などの効果であって、河川行政の成功によるものだ。河川行政でいえば昔は利水と治水だけだったが、平成9年に河川法が改正になり、環境に配慮するという観点が加わり、多自然型の川づくりを行うようになった。堰堤には魚道をつけるようになってきている。ただ砂防などはすごい川の奥まであって、なかなか進んでいない。砂防も最近はスリット型堰堤などをつくるようになり、川や魚に影響が少ないよう努めている。今後もいろいろな方々の意見を聞きながら進めていく。
今 野 漁協は平成16年に漁業権の切替を迎える。それに向けて漁場計画づくりが必要だが、そのためには広く意見を聞くために来年度に公聴会を開く予定だ。また漁協は組合員の高齢化と財政難という2つの大きな問題を抱えている。漁協の今後を考えるとそうした問題を克服していく必要がある。県の漁業調整規則の改正も視野に入れている。
島 軒 河川環境を改善することの他には、釣り人のマナー、遊漁券の問題、監視体制などについて問題意識を持っているが、このうちの監視体制については組合員の高齢化などもあって活動があまり活発でないのが実状。今後は若い人の力が必要だ。釣り人でマナーの悪い人もいるので、乱獲などについても監視していかないといけない。
高 橋
最上川第二漁協では、行政が事業主体となり今年鮭の釣獲調査として鮭釣りを一般に認めた。11日間で150名に許可証を出したが、応募は全国から220〜230あった。新しい漁場づくりとして、非常に面白い事業だった。
寒河江 3ついいたいことがある。ひとつは監視体制のことだが、これは全県的に充実させるのは難しいだろう。釣り人の多い川を選ぶなど重点を絞って行ってはどうか。秋田の米代川はすごく監視が厳しくて、1日釣りをしてると何人も監視員がくる。参考にしてはどうか。二つ目は寒河江川のキャッチアンドリリースについてだが、当初はC&Rで釣っても魚が残り再生産があって、自然の川に近くなるのではと考えた。でも今後は自然再生の方向と、釣れる釣り場としての方向と2つに分けて河川管理を考えていいのでは。3つ目は釣り人のマナー(モラル)低下ということがさっき出たが、我々としては河川工事をするときに釣り人の意見を聞いてもらいたい。その場がほしい。
斎 藤
渓流協ができて3年になろうとしている。さっき釣り人の立場向上といったが、それには釣り人が認められないといけない。そのためにはこういうフォーラムに釣り人に積極的に参加してもらいたい。それから、釣り場環境の規制の簡素化も必要。規制は多いが釣り人はあまり知らないのではないだろうか。
鈴 木 河川環境保全のため、予算をとってゴミの収集などをやっている。そういうのをやっていると、川にゴミが多く、とた不法投棄が目立つ。河川管理については、行政だけが行うのではなく、一般の人にもやってもらう制度をスタートしている。1団体10〜20万円程度の補助だが、今年は山形県で44団体の登録があった。詳しく知りたい場合は県の河川砂防課に問い合わせてほしい。
今 野
山形県の河川は自然が豊かで、環境的には恵まれていると思っている。循環型の体制ができれば地域振興にも寄与すると考えている。また、いま漁場に関して多様なニーズが出てきている。C&Rの考え方もそうだが、自然環境の保護、地付き魚の保護、いろいろあって一気にはできない。一例を挙げれば放流しないで地付きの魚を守り、釣りもしない(禁漁)の支流をつくるとか、下流エリアには釣り堀的なエリアを設けるとかだ。
高橋 〜会場からの質問に対し〜・・・寒河江川のC&Rについてはリリカルアングラーズの提案を受けてスタートしたもので成果を上げた。だから釣り人の意見は本当に尊重したいと思っている。一方、本道寺の管理釣り場はなかなかうまくいかない。採算性が問題だ。永久保護の問題については、月山から流れる石跳川を完全禁漁にしている。非常に効果的だと思っている。いままで言ったのは渓流魚のことだが、漁協としてはアユも大切に考えている。琵琶湖産アユの放流をやめて、県内産アユに切り替えてからうまくいっている。不公平感については決定的な解決法はどの漁協もまだない。県の監視員はいるが、・・・。ボランティアではとても無理。有料(※ 日当などを支払うという意味)にしたいが、財政の問題がある。しかし重点的に可能なところからでもやっていくべき。
会場から 枝沢を禁漁にして魚を保護しても、本流にニジマスなどを放していては、枝沢で生まれたイワナなどが本流に下りたときにニジマスのエサになってしまう。その辺はどう考えるか。
今 野 もっともなことだ。でも聞いてみると、そういうのも地元の要望などがあって放流してきたきらいがある。漁協の財政問題については、増殖経費に一番金がかかっている。漁協の収支は全て公開されているので見てもらうとよくわかる。漁協は利益追求の団体ではない。漁協に関しては、もっと地元の人に加入してもらいたいと思っている。
会場から 河川工事をする時に釣り人の意見やアドバイスを聞くことは考えてないのか。
鈴 木 いままでは漁協の意見を聞いてやってきた。でも今後は、釣り団体の話も聞いていきたい。
会場から 河川工事をすると川がすべてチャラ瀬になってしまう。これでは魚は生きていけない。どう考えているか。
会場から さっき川の里親の話(※河川管理を一般の団体などにもやってもらうという制度)の話が出たが、川の管理は県が管理する川と国が管理する川とで分かれいる。我々の釣り団体も申請しようとしたら、その川は国管轄なので対象外みたいなことだった。我々は国管轄の川でも釣り大会やったり清掃したりして実績をつくってきたのに。相互理解がないのが問題だと思うので、県と渓流協がやっている円卓会議にぜひ河川課の人も参加してほしい。切にお願いする。
会場から 大井沢のC&R区間についてだが、魚がすごく傷んでいる。目が飛び出したり、傷ついていたりして、そういう魚が釣れると悲しくなる。そういう魚の対策をしてほしい。
会場から 魚が傷つくのは、そもそも釣り人がやっていることだ。だからC&R区間では、できるだけ魚を傷つけないことが求められる。逆にいえばそういうことが学べるのもC&R区間ならではのことだ。
中 村
いま、川の管理は漁協と釣り人の間だけで話し合われている。しかし、いずれ近いうちに、そういう体制が多くの一般の人々から責められるようになる。川は釣り人や漁協だけのものではないのだし、たとえば魚の産卵を見ることが目的になるような時代がくる。そういうことを認識しておかないといけない。
川の管理とともに、魚に関しては個体群管理がこれからは大切になる。単に河川環境を管理したり、魚を放流したりするだけでなく、支流ごとに遺伝子が違うイワナを保全管理するようなやり方だ。個体群管理には「生息環境管理」「遺伝子管理」「利用管理」「種苗放流管理」の4つが考えられる。「利用管理」はさらに遊漁管理と漁業管理の2つに分化できる。これらの実現のためには、水産庁への働きかけも大切になる。